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薬学部

西山先生ピックアップ

なぜクスリは病気に効くのか?
なぜクスリには副作用があるのか?

西山 信好 教授(薬理学)
クスリが効く本当の理由を知りたい?
ACTH製剤(コートロシンZ注)の写真

現在使われているクスリの多くは経験的あるいは偶然に「効く」ことが知られあるいはわかったものです。なぜ病気に罹るのかというメカニズムは後からわかってくることが多いのです。あるいは逆に、こういうタイプのクスリが効くのだからこの病気のメカニズムはきっとこうに違いないというように、クスリの効果から病気の理解が深まることもよくあるケースです。

このように病気の原因がたとえ不明であっても、クスリが効くメカニズムを研究することで患者さんに大きく貢献できるのです。私自身が興味を持っている疾患として、乳幼児期に発症する「点頭てんかん」(ウェスト症候群)という治り難い病気があります。この病気では、理由は良くわかっていませんが、なぜか副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が有効な作用を示すケースが多く認められています。私はACTHが「効く」メカニズムを明らかにすることで、この難しい病気に対する真の理解を深めたいと思って研究を進めています。

クスリの副作用はどうして起こる?
IFNa製剤(スミフェロン300)の写真

全てのクスリにはリスク(副作用)があります。これは何も医薬品に限ったことではなく、漢方薬やサプリメントなどの健康食品でも同様です。俗に「しょう油も一升飲めば毒になる」といわれていますが、クスリも決められた程度を超えて服用すると副作用が生じます。それでは、クスリの副作用は、単純に量だけの問題なのでしょうか?私はそれだけではないと考えています。上でも説明したように、クスリが効くメカニズムは実は良くわかっていない場合が多いように、クスリがもたらす副作用にも量だけではなくそのクスリの本来持っている性質(質)が関係しているケースがあるのです。

私が興味を持っているクスリの副作用として、ウィルス性肝炎に対する治療薬のインターフェロンαが引き起こすうつ病(あるいは、うつ的状態)があります。私の研究結果によれば、インターフェロンαは実は脳内のモルヒネ受容体に直接影響することで、うつ病(うつ的状態)をもたらすことがわかってきました。インターフェロンαとモルヒネ受容体は、従来の常識ではまるっきり関連しないと思われていましたが、クスリの副作用を研究することで、このように全く新しいことがわかってくるのが、クスリの副作用研究の醍醐味です。

教授がこの研究を振り返って、良かったと思えたことは?

理由はわからないけどこの場合はこのお薬を使うと良いとか、原因は不明だけどこのお薬にはこういう副作用があるのだとか、経験的に積み上げられたノウハウが臨床現場には数多くあります。これをサイエンスの力で一つ一つ丹念に解きほぐしていくことを通じて研究者としての快感が得られることです。

薬学部医療薬学科をめざす学生さんへメッセージをお願いします。

多くのみなさんが卒業後に活躍する医療の世界は日進月歩の技術革新や新たな医薬品の出現により毎日変わっています。私が諸君にしっかり身につけてから卒業してもらいたいと希望する能力は「変化に自ら対応する能力」です。日々変化する医療(環境)の中では、不思議に思ったこと、理由のわからないことに出会うことが良くあります。そういう時に、それらの疑問を放置してただ流されるのではなく、自らが見つけた疑問点(私の場合で言えば、なぜACTHが点頭てんかんに効くのか?なぜインターフェロンαはうつ病をもたらすのか?)に対して何らかの仮説を立て、検証することのできる能力です。その作業によってまた、自分の仕事のあり方・やり方を変えていく能力も養われます。このような能力こそが真の意味での「サイエンスの能力」だと私は考えています。みなさんも兵庫医療大学薬学部の場で皆で努力してこのような一生役に立つ能力を身につけましょう。

西村 信好 教授のプロフィール

  • 昭和57年3月 東京大学薬学部卒業
  • 昭和59年3月 東京大学大学院薬学系研究科修士課程修了
  • 昭和62年3月 東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了
  • 昭和62年4月 東京大学大学院薬学系研究科・助手
  • 平成3年5月より平成5年9月 米国NIH訪問研究員
  • 平成10年6月 東京大学大学院薬学系研究科・助教授
  • 専門は、薬理学、神経科学
  • 趣味は、高等教育のあり方を通じて薬学教育の将来を考えること