メニュー
閉じる

本学薬学部と兵庫医科大学 解剖学講座らのグループによる共同研究論文が、米国の権威ある医学雑誌「Diabetes」に掲載

2017.10.31

兵庫医療大学 薬学部、兵庫医科大学 解剖学講座らのグループによる共同研究論文が、米国の権威ある医学雑誌「Diabetes」に掲載されました。

王 勝蘭 助教

論題

Negative Regulation of TRPA1 by AMP-activated Protein Kinase in Primary Sensory Neurons as a Potential Mechanism of Painful Diabetic Neuropathy

論文著者名

王 勝蘭 助教(兵庫医療大学 薬学部)、小林 希実子 講師(兵庫医科大学 解剖学 神経科学部門)、小暮 洋子 助教(兵庫医療大学 薬学部)、山中 博樹 講師(兵庫医科大学 解剖学 神経科学部門)、山本 悟史 教授(兵庫医療大学 薬学部)、八木 秀司 主任教授(兵庫医科大学 解剖学 細胞生物部門)、野口 光一 主任教授/学長(兵庫医科大学 解剖学 神経科学部門)、戴 毅 教授(兵庫医療大学 薬学部)

概要

兵庫医療大学 薬学部 東洋医薬部門 王勝蘭(Wang Shenglan)助教らの研究成果が、世界で最も権威のある医学雑誌の一つである「Diabetes」に掲載されました。この研究は、兵庫医療大学 薬学部 戴毅教授と兵庫医科大学 解剖学 神経科学部門 野口光一主任教授/学長等との共同研究で、感覚神経に発現している疼痛センサー(TRPA1)は、エネルギー代謝センサー(AMPK)とそのシグナルによって負の制御を受ける新しい生理現象を解明したものです。また、本研究は糖尿病や肥満症など体内エネルギー代謝異常による感覚神経機能の変調(疼痛過敏など)の発症機序を示唆し、メトホルミン(商品名メトグルコ)など体内AMPKシグナルをコントロール薬剤の疼痛緩和効果を提示しました。

研究の背景

糖尿病性神経障害は糖尿病患者の約4割が発症する、もっとも多い合併症です。有痛性の場合は糖尿病の早期から発症し、患者のQOLを低下させる要因の1つです。その発症機序は代謝因子、遺伝因子など多くの因子が関与しており、それらが相互に、あるいは相乗的に作用するものと考えられていますが、疼痛過敏などの感覚障害に至るメカニズムが解明されておらず、有効な治療法が確立されていません(Mizukami, Diabetes Frontier 2015)。 AMPキナーゼ(AMPK;adenosine monophosphate-activated protein kinase)は、細胞内AMP/ATPの変化によって活性化し、グルコースや脂肪酸の利用、遺伝子発現、タンパク合成など多様な生理機能に関与します。AMPKは細胞のエネルギー恒常性の最上位の調節因子として働き、糖尿病の病因・病理及び治療においては極めて重要な役割を担っています。 一方、Transient receptor potential (TRP)A1 チャネルは一次感覚神経に発現する疼痛受容のセンサータンパクとして、現在の疼痛研究領域で最も注目されている分子の1つです。

研究手法と成果

研究グループは、まずホールセルパッチクランプ法を用いて、感覚神経細胞に発現するTRPA1チャネルの内向き電流がAMPKの活性化によって抑制する現象を突き止めました。AMPKによるTRPA1の制御機構を調べたところ、細胞におけるTRPA1チャネルタンパクのトータル発現量が変化しないものの、細胞膜上に発現する同チャネルの量は減少したことが明らかになりました。さらに、レプチン受容体欠損マウス(db/dbマウス)を用いた動物実験において、同マウスは肥満により血糖値が上昇し、知覚神経におけるAMPK活性の低下や機械刺激に対する疼痛過敏が血糖値に依存的に発生したことが確認されました。この疼痛過敏はAMPKのアゴニスト投与によって軽減されました。また、db/dbマウス知覚神経細胞膜におけるTRPA1の発現変化は疼痛過敏の発生と連動して変動することが確認されました。本研究は、生体におけるエネルギー代謝と疼痛感覚との関連性を示唆し、有痛性糖尿病性神経障害の新しい発症機序を解明しました。今後、これに基づく疼痛治療薬の開発や、既存AMPK薬剤の適応拡大に繋がる臨床試験が期待されています。

今後の課題

本研究で得られた成果に基づく疼痛治療薬の開発や疼痛コントロールを目的とした既存AMPK薬剤(メトホルミンなど)の臨床試験研究などは今後取り組む課題として考えられます。

掲載誌