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平成30年度学位授与式 馬場学長式辞(2019年3月15日)

2019.3.22
馬場 明道 学長

皆様、おはようございます。学長の馬場です。本日、ここに兵庫医療大学の平成30年度学位授与式を挙行いたします。多くのご来賓の皆様、保護者の皆様には、ご多忙の中ご臨席を賜りまして厚くお礼申し上げます。

まず、薬学部、看護学部、リハビリテーション学部、計327名の学部卒業生、大学院薬学研究科博士課程、看護学研究科、医療科学研究科修士課程、計11名の大学院修了生のみなさん、ご卒業、修了、おめでとうございます。兵庫医療大学を代表して、これまで皆さんが尽くされた努力と研さんを、心からお祝いし、讃えたいと思います。また、これまで長きにわたり、皆さんを支えてこられましたご家族の方々にも、ここにお喜び申し上げますとともに、深く敬意を表します。

今日は、まさに春の訪れを感じさせる素晴らしい日和となりました。このような日に、社会人としての新たな旅立ちを迎えられる皆さんをみて、本当にうれしく思います。皆さんは、これまでの大学生活において、数多くの経験を積まれたことと思います。その経験が、将来皆さんを勇気付け、時には、また、癒してくれる大切な財産となるであろうことを信じています。

さて、この機会に皆さんへのはなむけに、少しお話をいたします。私事になりますが、私はこの3月で学長を退任します。足掛け45年の大学の教員生活で、非常に多くの学生さんの新たな旅立ちに立ち会ってきました。

卒業式の学長式辞といえば、高い見識と教訓と示唆に跳んだ格調高いものが多いようですが、本日はそのような話ではなく、私自身の皆さんへの思いを率直にお伝えすることで、最後の式辞にしたいと考えています。

皆さんが巣立っていくこれからの社会は、予測を超えて、対応が難しいものになるであろうといわれています。

インターネットの普及は、生活に画期的な利便さをもたらし、誰でもが好きなように自分の意見を公開でき、バーチャルを含め、非常に簡単にヒトとヒトとが繋がることを可能にしています。しかし、半面、何が真実かの見分けが難しくなり、無責任な極端な意見や、ネットの炎上がまかり通るなど多くの解決すべき課題を伴っています。SNSに象徴されるバーチャルな人間関係が、現実と混在しているような状況で、氾濫する情報の洪水の中で、自分自身の考えをしっかりと持ち、対応していくことがかなり難しくなっているといえます。

加えて、より広い視野で見ると、あらゆる面でのグローバル化により、第二次世界大戦後、世界が築き上げた民主主義の価値観、生きかた、そのものが揺らいでいくような時代を迎えつつあるといっても過言ではないと思います。おそらく、皆さんは、そのように感じることは少ないかもしれませんが、私のようなシニア世代は、社会そのものが根底から大きく変わっていくのではと云う恐れを感じています。

そのような社会の現状に、国も、産業界も、メデイアも、声を揃えて、次のように主張します。グローバルな人材を目指ざせ、イノベーションを起こせ、社会のため、組織のために生きなさい、あるいは、社会や組織を引っ張っていくリーダーになりなさい、それがこれからの社会を担う若者の目指すべきことであると。

確かにその通りだと思います。しかし、私は、これがスローガンであるとしても、少し違和感を覚えます。グローバルでなく、ローカルでも良いじゃないか、イノベーテイブでなくて、普通でも良いじゃないか、リーダーでなくて、フォロワーでもよいじゃないか。グローバルでイノベーテイブなリーダーを目指すヒトばかりの世の中は、遊びが無く、息苦しいのではないでしょうか。

グローバル、イノベーション、リーダーを目指すヒトは、その生き方を大切にすればよいし、そうでないヒトは、自分にあった行き方を選べばよいのではないでしょうか。様々な考えを持つ様々なヒトが、お互いを尊重し、協調し合うことでこそ、健全な社会が形成されると私は信じています。これが、今日最も私が皆さんに伝えたいことのひとつです。

これから皆さんは、自立した個人として、生きていかなければなりません。一人で戦い、生きていくのも良いでしょう。また、家族や親しい友人との交わりの中で、生きて行くことが出来れば、より勇気付けられるでしょう。 いずれにしても、これからは全てが自己責任です。まず、仕事を持ち、経済的に自立することは、最も肝要なことです。

一人ひとりは、かけがえの無い存在として、幸せになる権利を持つということに尽きますが、当然、それには、社会の構成員としての果たすべき義務が伴います。一人で生きて行くにしても、他のヒトとのかかわり無くしてはありえません。

そして、人間社会においては、どのような集団であれ、利害の衝突、考え方の相違は避けて通れません。各々の人が、てんでばらばらに、自己主張だけをする集団は、いずれ、衰退して行きます。 逆に、考え方の相違、利害の衝突を調整し、適応していく集団は生き伸びていきます。

人間力とは、知性、理性、そして、豊かな人間性に裏付けられたものであり、集団の中で生きていくための重要な要素といえます。人間力をいかに高めるかは、なかなか難しいことで、日々の生活の中で、あらゆることから自然と学び取っていくほかありません。多くの先人たちが述べているように、私たちの人生を大きく左右するのは、むしろ専門力・スキルよりも人間力であるといっても過言ではありません。

これからの人生、自分に与えられた役割を誠実に果たしてください。そうすることで、必ず社会の中での自分が生きる居場所を見つけることが出来ます。これが、皆さんに伝えたい2番目のことです。

今後、いろいろな課題、困難に向き合うことがあることと思います。挫折することも多いかと思います。 夢と希望と勇気をもつこと、そして挫けることも、人間だけに与えられた素晴らしい能力です。 挫折したときも、夢と希望を持ち続けてください。そして、勇気をもって立ち向かってください。必ず、解決の道が見えてきます。

最後に、先日看護学部の竹田先生の最終講義がありまして、私も拝聴しました。多くの卒業生も参加する中での素晴らしい講義でした。とりわけ感動したのは、サプライズとしてのビデオレターで、多くの卒業生がそれぞれの職場や家庭で赤ん坊を抱いたまま、「竹田先生、ありがとう、おめでとう、竹田先生大好き」とのメッセージを寄せていました。竹田先生も涙ぐまれていました。 教育における、教える側と教えられる側の関係は、まさにこのようなものだと改めて気付かされ、私も少なからず感動を貰いました。

皆さんが、これから先の人生において、ふと、「医療大は良かったなあ、あの先生はおもしろかったなあ」などと思い出していただける瞬間があれば、私たちは本当にうれしく思います。

皆さんの今後のご健勝をお祈りします。

平成31年3月15日
兵庫医療大学 学長 馬場明道