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薬学部大野喜也助教・田中稔之薬学部長らの研究成果が医学雑誌「Oncogene」誌に掲載

2018.9.25

概要

兵庫医療大学薬学部の大野喜也助教、田中稔之薬学部長/教授らの研究成果が、腫瘍学における世界で権威ある医学雑誌のひとつ「Oncogene」誌に掲載されました。この研究は、兵庫医療大学と大阪大学の共同研究の成果として発表されました。本論文は、悪性中皮腫における癌幹細胞の新しい制御機構を明らかにしたものです。また、研究グループは同論文の中で、その制御の中心となるシグナル伝達系を阻害したときの癌細胞の増殖阻害効果を示し、それらを標的とした悪性中皮腫の新たな治療戦略を提唱しました。

論文題名

Differential regulation of the sphere formation and maintenance of cancer-initiating cells of malignant mesothelioma via CD44 and ALK4 signaling pathways.
論文は以下より閲覧できます。

論文著者名

大野 喜也※1、新玉 紗理奈※1、三宅 咲奈※1、田中 亜弥※1、清水 雄太※1、吉藤 愛※1、山脇優輝※1、田中佐弥※1、佐倉 千萬※2 ※3、田中稔之※1

※1 兵庫医療大学 薬学部 生体防御学
※2 大阪大学 医学部附属病院
※3 大阪大学 医学部 外科

背景

悪性中皮腫は、胸膜などから生じる悪性腫瘍であり、アスベスト曝露との関連が強く示唆されています。悪性中皮腫は、長い潜伏期間を経て臨床的に進行した段階で診断されるケースが多く、今後、アスベスト禍による患者数の大幅な増加が懸念されています。しかし、悪性中皮腫は化学療法や放射線治療を含む既存の標準治療に抵抗性を示し、予後は非常に悪いことが知られています。これらの背景から、悪性中皮腫に対する新しい治療戦略の確立が急務となっていました。一方で、近年、がん組織は極めて不均一な細胞から構成されることが見出され、中でも癌幹細胞(cancer stem cell, CSC または cancer-initiating cell, CIC) と呼ばれる希少な細胞集団が、様々な癌の化学療法剤、酸化ストレスおよび放射線に対する耐性獲得や転移・再発に深く関与することが報告されていましたが、悪性中皮腫では明らかにされていませんでした。

研究手法と成果

研究グループは、悪性中皮腫細胞を特定の条件で培養を行ったとき、形成されるスフェロイド(足場非依存的な細胞塊)中にaldehyde dehydrogenase (ALDH) 活性をもつ細胞が高度に濃縮されてくることを見出しました。さらにALDH陽性 (ALDHbri) 細胞を詳細に調べたところ、癌幹細胞様の性質を示し、特に腫瘍形成において重要な役割を演じている可能性が示唆されました。また、悪性中皮腫のスフェロイド形成と、その中におけるALDHbri細胞の維持機構について検討を行い、それぞれヒアルロン酸 (HA) とその受容体 (CD44) を介したシグナル、およびActivin-Aとその受容体 (ALK4) を介したシグナルが重要であることが示唆されました。そこで、研究グループはCD44およびALK4の遺伝子発現が低下した細胞を作製し、腫瘍形成における役割を検討したところ、いずれの細胞も有意に腫瘍増殖の低下が認められ、これらのシグナル伝達系の重要性と治療標的としての有用性が示されました。(図1)


図1.悪性中皮腫幹細胞の維持機構(モデル)

今後の課題

本研究の成果に基づき、いまだ有効な治療方法のない悪性中皮腫に対し、CD44シグナルやALK4シグナルを標的とした新しい治療戦略の開発が期待されます。