子どもの権利ってどのようなことでしょうか?
子育ちサ-クルで指導者のもとで親子がゲ-ムをして遊びます。
「子どもの権利」という言葉は耳慣れないかもしれませんが、私たち大人に権利があるように子どもにも権利があります。ただ大人のそれとは違う点は、子どもだからという子ども固有の権利が「子どもの権利」にはあります。1989年に国連総会で「子どもの権利条約」が採択され、1994年に日本が批准したあたりから、徐々に市民権を得てきたように思いますが、まだ十分に浸透しているとは言えません。子どもの権利の例をあげると、病気やけがをしたら治療が受けられるといった「生きる権利」や、教育を受けたり休んだり遊んだりできる「育つ権利」、その他に「守られる権利」「参加する権利」などがあります。このような子どもの権利の根底には、子どもを人格の主体としてとらえるという考えがあります。言い換えれば子どもたちが人生の主人公として生きていけるということだと思います。ここ数年、入院をする、あるいは検査や処置を受けなければならない子どもたちのケアにも子どもの権利を守る動きが出てきています。その一方で守られていない典型例が、マスコミで多く取り上げられている「児童虐待」です。子どもの権利からみても児童虐待は最悪の事態だと言えます。
なぜ子育ち応援を通して子どもの権利を守る取り組みをしようと思われたのですか?
サ-クル終了後もお母様たちのおしゃべりは続きます。
1989年に大阪府下の児童虐待の状況を調査するグル-プに参加させていただいたのがきっかけで、子どもの権利を考えるようになりました。この調査で、児童、特に乳幼児への虐待者は大部分が実父母であることや社会的な問題や経済的な問題等が重なり合って発生することがわかりました。そして虐待する親は虐待を受けて育ったということもわかってきました。これらの事実は私にはとても衝撃的でした。ちょうどその頃から、実習施設である病院に虐待を受けた多くの子どもたちが入院してくるようになりました。その子どもたちに関わっていくうちに、虐待はどの家庭にでも起こる可能性があることもわかってきました。そこで子どものケアも大切だが、子どもの権利を守るためには、子どもだけではなく、その親たちにも関わっていかなくてはという思いに駆られ、看護師である私に何ができるのかを模索していました。そのとき、ある開業助産師さんが開催している子育ち応援サ-クルに遭遇しました。今まで病院という施設の中だけで活動していた私には、地域の中で、しかもお母様方とごく当たり前に「隣のおばさん」のように接しているその助産師の姿に感動しました。そして地域での子育ての応援が児童虐待の予防につながるし、ひいては子どもの権利を守る取り組みにもなると思いました。そして、子どもは自分の権利を大事にして育てられると、人の権利も大切にする大人に育つと思いました。「将を射んと欲すればまず馬を射よ」の諺のように、周りの大人である親からアタックすることにしたわけです。一方で子どもたちに対しては入院や採血などの処置を受ける時に、子ども自らが心理的に準備ができて、その状況に対処する能力を高めるプレパレ-ションに取り組み始めております。
子育ち応援サ-クルに出会ってよかった点を教えてください?
子どもたちが採血等の苦痛を伴う処置を受ける時の説明に用います。
よかった点が何点かあります。まずお母様方の意見交換や質問には親の子育てに対する考え方や本音がよく現れており、現代の育児事情がよくわかる点です。もう1つは、その質問はとても現実味のある内容や未知のものも多いため、私には良いチャレンジの場になっています。さらにお母様方のエネルギ-のすばらしさを感じることができ、人間っていいなと再認識できることも良い点です。でも最高に良いことは、子育ち応援サ-クルであるにもかかわらず、私の方がいつもお母様方からパワーをいただき元気になれることです。
看護師を目指す学生へのメッセージをお願いします。
私は現在小児看護に携わっていますが、小児看護を自ら選んだわけではありません。たまたま勤務交代でNICU(未熟児や病気の重篤な赤ちゃんが入院するユニットです)に配属となったのをきっかけに、私の小児看護は始まりました。学生時代はどちらかといえば、子どもは苦手でした。まして子どものケアに携わろうなんて全く考えていませんでした。ですから、NICUに配属と聞いたときには、「看護師をもうやめよう」と思ったぐらいです。でも「駄目で元々!一度やってみてから考えてもいいかな」と思い、働き始めました。開き直ったのがよかったのか、毎日子どもに関わって行くにつれ、徐々に興味がわいてきました。その経験からわかったことは、やる前から「これはできない」「これは嫌いだ」などと決めつけないで、チャレンジしてみることは大事なことだということでした。今は子どもの能力のすごさに圧倒されながら「チャレンジ! チャレンジ!」と自分に言い聞かせながら、子どもたちに関わっています。学生の皆さん、苦手かどうかは深く関わってみないとわかりません。食わず嫌いにならずに、何事にもチャレンジして、新しい自分を発見する学生生活もいいものですよ。期待しております。
藤井 真理子 教授のプロフィール
- 1972年 徳島大学教育学部看護教員養成課程卒業
- 1996年 関西大学大学院社会学研究科博士課程前期課程(社会心理学専攻)修了
- 1999年 関西大学大学院社会学研究科博士課程後期課程(社会心理学専攻)修了
- 看護師として臨床現場で経験後、大阪府立看護短期大学助手、講師、助教授を経て、2000年より大阪府立看護大学医療技術短期大学部看護学科教授、2005年より滋賀県立大学人間看護学部教授。
- 専門領域 子どもとその家族に対する看護
- 好きなこと 水泳、ボ-とすること。